なんとかロックフェスティバル前夜祭

なんとも朝早く起きる。膨らむ期待を抑えることはできずに一杯の紅茶を嚥下する。気持ちを抑える効用などありはしない。必要なものをバッグにつめこみ、いざ新潟へ。

車の中は騒がしい。するりと神奈川をぬけ、東京でうだうだと何人かの婦女子を拾い、スーパーでカシスを買う。練馬から高速に乗り、埼玉、群馬、そして新潟へ。新潟までの道は遠いものの、湯沢は案外近くテンションがバカになる。チンポの屹立をとめることはできない。婦女子をホテルまで送り、遂に苗場に着く。去年見たのと同じ光景がそこには広がり、したたる涎をとめることは困難であった。遂に始まってしまった、そんな悲しい思いが頭をもたげ、涙しそうになる。

キャンプサイトで大阪の友人と合流し、少しばかり懐かしむ。ノスタルジーにひたる間もなくテントをたて、会場へと歩をすすめる。空は青からオレンジへとその色を変えようとしていた。友人と酒を飲みながらこれから4日間への期待と、始まってしまった悲しさを伝えあう。さえぎるものはなにもない。5日ほど前、大学で背の高い友人と歩いている時にこう聞かれたことを思い出す。「フジロック好きか?」「好きっす、大好きっす」そんなバカげたことをも本気で言ってしまえたことを思い出す。けれどもその時のボクは、あと4日で終わることを考えると悲しさしか感じなかった。

19時。少しばかり肌寒い風の中、僕らは原島のMCに狂気する。そしてはじまる盆踊り。去年参加できなかった分、懸命に苗場踊りを踊る。ちょっちょいのちょいで高くジャンプする。その高さはバレーボールをやっていた当時よりも高い。

入り口で配られた抽選用紙を破り捨て、飯を食らってトイレをすまし、レッドマーキーに足を運ぶ。DJがまわしている。確か一曲目はでぶ少年の「Praize you」だった。踊る。阿呆のごたる踊りに周りを確かめるが、まわりも阿呆ばかりで安心する。そのあと登場したおっさんのMCが「フジロックを語る時に忘れてはならない人がいます、ジョーストラマーという人です。」このMCに涙を流す。大して知りもしないくせに涙したのはジョーストラマーにではなく、ジョーストラマーという偉大なミュージシャンがフジロックを好きでいてくれたことにであったと思う。みなとはぐれたのでオアシスを彷徨う。今年もたくさんの阿呆が思い思いに過ごしているのを見て悲しくなる。今年は大人数で来たのに、一人でいることに悲しくなり、誰か知り合いはいまいかと探すとドレッドと会う。しばらくそいつと過ごし、去年のジャックジョンソンとドノバンフランケンレイターのアコースティックライブのビデオを見ていると同居人のユキとその友達のとっくんと出会う。二人ともそれなりにお酒が入っているようで、レッドマーキーに踊りにいく。酒の入っていたユキの踊りは相変わらずへんてこで、とっくんはとても楽しそうに踊っていた。しばらくするとエディリーダーのライブが始まり、そのかっこよさと彼女のかっこよさを肥大させるフジロックの空気にでっぷりはまる。

そのあとはなにを見たか忘れたが、初日からそれなりに踊り疲れて、テントに戻る。一秒一秒が過ぎていくことに嫌悪を感じながら、遠くで流れるビートに身をまかせ、眠る。

MVP・・・前夜祭始まった瞬間〜盆踊り
準MVP・・・ジョーストラマー エディリーダー