虎穴にいらずんばハム

今日からうちの天王山。阪神タイガース日本ハムファイターズの3連戦。阪神セリーグの優勝争いの中心でいるために1戦も落とせない戦いである一方、日ハムだってもういい加減連敗をとめなくちゃならない。この一戦はそういう切迫した意味合いをもつ。それに加えて、コルビュジェ湘南台に住むワタシともうひとりの友人のそれぞれの贔屓のチームが、阪神と日ハムなのである。それゆえ、今夜の我が家は甲子園に負けないほどの混乱っぷりで、イニングがはじまるごとに様々な手を使った挑発がはじまり、互いのチームが点をとるたびに罵声が投げ賭けられる。日ハム選手がギリギリでアウトになると「ハムばっか食ってるからとろいんちゃうかーー!!」という声がとび、阪神の岡田監督の顔がブラウン管に映ると「てめえんところの監督の顔は糞ころがしみてーじゃねーかよーーーーーー!!」という声。それらがリビングを隔てたそれぞれの部屋から発せられる。そのさまはまるで醜い猿同士の争いである。そして今日に至っては、阪神が金本の本塁打で5−4でサヨナラ勝ちをおさめ、セリーグの単独首位にたった。そして日ハムは泥沼の10連敗でワタシの友人はそのシワだらけの顔をさらにシワくちゃにして、畳の上に大粒の涙を降らせていた。さすがにかわいそうになったワタシは、苦手な洗い物をすることで彼の面倒を取り払ってやろうと思ったが、そんな行為もむなしく、家にあった虎のぬいぐるみや、白黒ストライプ模様のタンクトップや、阪神百貨店の折り込みチラシ全てをめったくったに破壊しはじめ、家の中が混沌とし始めた。さながらゴミ処理場のようである。それを見ているのも心苦しいので、ワタシはこれから活動写真とやらを見ることにする。ビッグフィッシュ。

活動写真とやらで思い出したけれども今日は久々にまとまった時間ができたので、渋谷とやらに活動写真とやらを見に行った。活動写真とやらは、それは一体なにかと山田五郎に尋ねたところ、人類が開発したもので、大きな紙の上で人が動く、と言っていた。なんのことだかさっぱり見当もつかぬワタシは見るが早しとユーロスペースまで行って「エレニの旅」と冠せられた活動写真とやらを見てきた。なるほど五郎の言うとおり大きな紙の上でどこぞの西洋人がいろいろ苦難に見舞われても夫や子供たちに対する一途な愛を貫いておったり、見たこともないような楽器でミュージクを奏でておったり、それは大変興味深いものであった。しかしいかんせん見ている最中に尿意をもよおしたのだが、横に座っていたおじさんが小指をどこぞに忘れてきたあっち系の人で、厠に立とうものならばその場で切り捨て御免になりそうで、なのでas possible as我慢しておったけれども、ついぞ我慢できなくなり、その場で垂れ流したらその刺激的な臭気と股間あたりの湿り具合が気持ち良かったり悪かったりで、集中して活動写真とやらを楽しむことができなかった。

まだ隣の部屋で彼は泣いている。ヒルマン人形を抱きしめて、むせび 泣いている。彼女ほしい。

(6月11日 0時8分)