長いけどね!!

「コンドーム、バットにいれて冷やしといて」

なんていうことを寝ている時に言い出すなんてこっちも思っちゃいなかったから、言った後の会場の雰囲気なんて気にもせずにスヤスヤと寝息をたてている君の寝顔が余計にかわいく見えたりする。寝ている間もメガネをつけたまま、そのメガネはずり落ちていまにも鼻のてっぺんに引っかかっりそうで、それならそれでかわいいのだけれど、鼻のてっぺんにはおできというかめんちょがついている君の皮膚だから、メガネがその部分に早く触れて地味だが強い痛みが走り、そして目を覚ましてはくれないかと、つまらない映画を見ながら思った。だって寝言以前にグースカグースカといびきが五月蝿いのだもんで。

それが確か3本目の「マッチ工場の少女」の時。君がそんなわけの分からないかつ、おもしろい寝言を言うもんだからまわりのお客さん、少なくとも心の広そうな恰幅のいいおじさん方はそのごつい肩をぎこちなく上下させながらクスクスと笑っていた。次の日にアフリカンフェスタで食べたクスクスはまずかった。あのとうもろこしみたいな基本食みたいな日本で言うお米みたいなんがいまいちというかどうも臭くて歯ざわりが気持ち悪くてダメだった。だから一緒にいたYがお金がなさそうで昼ごはんもままならなさそうな顔をしてルンペンみたいな食欲を示したからクスクスを食わしてやった。ひとりの女を養っているような感覚が、即物的に味わえた。そのお礼としてもらった100円のミントティーが奇跡のような優しい味だったので、ピーターバラカンと出会えてよかった。アフリカンフェスタとピーターというとりあわせは、あまりにしっくりきすぎて逆に気持ちの悪さを感じた。彼は赤っぽい、茶色に近い赤、アズキ色というかそんな感じのTシャツを着ていた気がした。そうそう、今ボクが着ているようなスウェットの色ですよ、ね。

話を戻す。昨日はカウリスマキのオールナイトで、池袋の新文芸座には一体今月何回行っているんだというようなツッコミが笑福亭あたりから飛んできそうだけれど、カウリスマキとかいうヨーロッペっぽい名前の監督だから行かないわけには行かず、特に用事もないし、ボーリングのバイトもないので、ボーリングのバイトで思いだしたけれども、昨日の朝はひどく恐ろしい夢を見て、正確に言うとそれは2部構成で、1部がボーリングバイトに関するひどく怖くて2部がいまいちよく分からない感じで、その二つの夢に共通性は無いのだが、どういうわけかそこに底流している根源的な雰囲気というか空気感というかそういったものは同じで、だからボクはその夢を2部構成のものとして捉えるのだった。

話を戻す。昨日はカウリスマキのオールナイトで、池袋の新文芸座で4本もの彼の映画を見たのだけれど、誤解を恐れずに一つの言葉に集約してしまうと、「こんなにわけの分からん映画は見たことがない」というのが最も強く感じたところで、特に一本目の「過去のない男」なんかは一体どこのラインに沿ってこの人は映画を作っているのだろう、この作品を額面通りに記憶を失った男の再生の物語として捉えていいのだろうか、いやけれどそれなら時折でてくる日本語の歌やバカみたいに陳腐なシーンの説明がつかないのではないか、と自分の中でも混乱と秩序の崩壊が起こり、そこまでカオスを提供してくれた監督はこれまでどこにもいなかったから、カウリスマキは面白い、とそういう結論。あと彼の作品には足の裏を軽くくすぐるようなジョークが散りばめられて、そのジョークもどのように受け取ったらいいかというのも混乱の一つの要素だし、バックバンドを率いて歌っているこの世のものとは思えない顔したババアのどアップのシーンをどのように処理していいか、というボクの情報処理能力さえまともに働かないくらいの映画がカウリスマキ

これまでのオールナイトでは4本中3本よかったけど1本は寝た、とかそういうのが多かったけどカウリスマキは4本全て起きれて、しかもどの作品もおもしろさが一定のレベルを超えたのでこんなに充実したオールナイトはないな、としかもあんなおもしろい寝言が聞けちゃったしね。寝言で思い出したけどボクは寝ている時は寝言を言っているのだろうか、なんか言ってたでなんていうことはこれまで一度も言われたことがないのでどうやら寝言は言っていないようだが、親父が寝言を言うというか寝ながら唸るような人間なので、それの遺伝はきてはいまいかと、結構友人との共同生活を前にしてまた新たな懸念材料が提出された感じ。

特に昨日見た夢なんかは怖い夢だったから寝言を言ってるんじゃないか、と思うのだ。昨日見た夢はうちのボーリング場の常連さん、というか会員さんをひょんなことから偶然高いところから突き落として殺してしまい、それをひた隠しにして過ごしていたら別の会員のさんに遠まわしにいろいろな形で責められて、例えば「俺は真実を知ってるぞ」というようなことを精算の際に言われたりして、まるでドストエフスキーの「罪と罰」のような話ではありませんかと思ったら偶然にもカウリスマキの処女作は「罪と罰」だったというので、処女で思いだしたけれど巫女さんのバイトは処女でないとできないらしく、そんなもんどうやって調べんねんというのがオールナイト後に寄ったサブウェイでの専らの議題だった。

文章が長すぎると集中力の無い、活字に慣れていない頭の弱いSFC生に文句を言われるのでそろそろ終わりにするが、まだ言いたいことはたくさんあるので箇条書きする。
カウリスマキの4本目の作品「レニングラードカウボーイ」はひどくあらっぽいコメディで、カウリスマキとかいう固そうな監督の名前からすると意外で仕方なかった。
カウリスマキの映画をどう処理していいか分からないと先ほど述べたが彼は適当に(もちろん適当という言葉が100%適切だとは思わないし、ふざけて撮っているとかそういうわけじゃなくてうまく説明できないけどニュアンス的にはそんな感じ)映画を作っているということなら、そう考えるなら全て辻褄があう。
・オールナイト前には小島麻由美のライブに行ってて彼女の歌声は素晴らしかったがいまいちやる気のないライブだったので、ギターの塚本さんのかっこよさと、とasa-changの痩せっぷりを確認するに終始した。
・オールナイト明けに行ったアフリカフェスティバルはアフリカっぽい空気が流れててとてもオーガニックな気分になった。ミントティーがうまかった。
・5本好きな映画を言えと言われたらうまく思い出すことができない上に、試されている気がして罰ゲームのようなものだ。
・見た夢の第2部はフジロックの前夜祭のものでアテネの広場みたいなところで不器用なパフォーマンスを見せられるだけのものだった。

夢について語るのはひどく難しい。鮮明に描こうと思えば思うほど、正確な言葉は口先から遠ざかり、どこか記憶の深遠に吸い込まれていく。

(5月22日 23時52分)