関西人なあまりに関西人な

精力漲る夜のこと、以前ジャームッシュナイトに行けなかったボクは「ダウンバイロー」を見ることに。。なんともいい気分のを喚起してくれる映画で、言ってみるならばうまいディナーを食ったあとにしろ大してうまくない飯を食った後にしろ、とにかく甘くておいしくて優しいデザートを食べた後のよう気分になったわけさ。デザートうまけりゃ全てよしみたいな風に言われることもあるくらいだから、食事というのは我々は楽しみたいものである以前になによりもとらなければならないものだから、ある種の義務的な感覚が伴う。それに対してデザートってのはあくまでオプションやから、そのオプションというのは腹を満たすという目的にあるのではなく、顧客に満足感を与えるだとか、幸福感を感じさせるだとかそういったことに重点が置かれているわけで、つまりジャームッシュの「ダウンバイロー」はそんな映画だったというわけです。出演しているトムウェイツやらジョンルーリーは必要以上のかっこよさで、そこまでかっこいい必要はないのでは?みたいに言いたく思うのだが、先ほどの話でいうとデザートだって必要以上のもので、付加的なものが極地に達した映画だったので、必要以上にかっこいいということはマイナスイメージを喚起させる趣もあるがこれ以上とないお誉めのお言葉なので、俺も今後は総じて必要以上にいろいろと生きていこうと思った。

そして今日はもうすぐ運命の引越しの日がやってきやがるので、家にある、もの置き場と化したガラスの机を処分したり、故障してしまったバイクを廃車処理にしにいこうと近くのそういうことを全般的にやってくれる店に行った。引越しなんてする必要なんていうのは全く無くて、今のままでも十分不自由なく暮らせるのだけど、自分でもなんのために引っ越すのかが分からなくて、けれど少なくとも、必要にだけ駆られて暮らすというのはトムやジョンからなにも学んでないことになるので、必要以上のことをしようと思い、もうすぐ引越し。

机を処分してくれるおっさんは、ボクの関西のイントネーションをピックアップし、「西の人?」と聞いてきた。こういう時にシニカルなジョークを言える人間こそがボクの理想とするところの人間なので、「いやぁボクはレーニン大好きだから移ってきちゃいました」と言った。しかしおっさんは一向にその意味を解せずなんとか誤魔化そうと「いやあイントネーションが違うからさあ」と言ってきたので「ちょっと大阪でも北のほうの出身なんで柔らかいイントネーションかもしれないっす」「そうだねえ、ほんと大阪の真ん中にいる人のイントネーションなんてどぎついからねえ」「ですよねえ」という会話をして、こういう会話をしてると無条件にいい気分になれるなと感じた。そんで最終的には「学生さんならまけとくよ!」と言って500円まけてもらえたので、いやあ素晴らしいなコミュニケーションというものは。なんともヒューマン的で素晴らしい、こういうコミュニケーションは腐りきった現実世界からボクを救済してくれるひとつのクモの糸みたいなものかしらね。というわけで、関西出身でよかった、と思った。

そのあとにバイク屋行って廃車処理すると、ここでもまたバイクのナンバーが茨木だったので、「あら、大阪のひと?」と聞かれ、今度は普通に「はい」といい、そしたらおっさんが歯にたまった大量のヤニをこれ見よがしに見せながら「俺も大阪住んでてね、毎日釣りばっかしてたよ」「へえ、そうなんすかあ?」「琵琶湖にバスとか釣りに行ってたよ」「あぁ、近江八幡とかですか?」「そうそう、あれ、やってたの?」「昔結構やってましたよ、琵琶湖にも行ったし」「そっかそっか」やははっははは。と言ってそれなりに話が盛り上がったので、ここでも関西出身でよかった、さらには必要以上に多趣味でよかった、と思った。必要以上に。

来週の、木曜引越しなんすけど、誰か手伝ってくれへん?

(5月19日 17時20分)