ちんかすの残り滓

明日のことは今は分からないが、明日、大阪に帰ることにはなっている。そして実家に帰ると離婚をして嫁との暮らしをやめた弟が父親とともに実家にいることになっている。そしてその弟は私が帰るとそそくさと避けるように自分の割り当てられた部屋に入り、私からのツッコミから逃れることになっている。そんな弟に対して私は不法入国中国人ポン引きのような笑顔を携えて言う、「キャッキャ、お前離婚したらしいやないけ、キャッキャ」弟はなにも気にしていないような風で私を無視する。「娘はどこやったんやーーアイルちゃんは、キャッキャ、嫁んとこかーー、キャッキャ」私は鼻をほじりながら嗤う、「キャッキャ、キャッキャ、りーこーーーん、十代でバツ1、バツのついた十代」私は適当なメロディをつけて歌う。弟の部屋からはなにか妙な音が聞こえる。「ぐひ、ぐひ、ぐひん」弟は泣いている。「ぐひん、ぐひん・・・・」泣きながらもなにかを探している。押入れをあけるおとが聞こえ、荷物をおろす音が聞こえる。私は「キャッキャ、キャッキャーン」と言いながら冷蔵庫をあけ納豆に卵の黄身と白ねぎを加え、炊飯器で3日間保温された黄色いご飯とともに食べる。ご飯はひどくまずい、パサパサに乾き、煎餅のようだ。臭いはひどく下卑ている。私はそんなものでさえ喜んで食すことになっている「キャッキャ、キャッキャ」誰かが階段を降りる音が聞こえる。家には弟と私と、200匹以上のゴキブリしかいない。弟が降りてくる。私は食べ終えた納豆のパックを台所のシンクに放り投げる。ゆっくりと弟が降りてくる。納豆のパックは鼻をつく臭いを放ちながらシンクを外れ床に落ちる。パックは納豆が入っていた面を下にして落ちる。納豆の粘り気によってパックはバウンドしない。私はそれをひらう。床とパックとの間で黄色い糸をひく。「あーぁ、きったないのう、キャッキャ」パックを手にとり鼻に近づけその臭いを確認する。鼻に納豆の残り滓がつき、今度は鼻とパックとの間で黄色い糸をひく。それを左手の人差し指をクルクルさせながら取り去る。鼻をかぎ、納豆のにおいがしないことを確認する。確認してから納豆のパックをシンクに投げつける。本気で。右手をシンクのはしに打ちつける。思わず「ウッ」という声がでる、それと同時に後頭部に衝撃が走る。振り向くと真っ赤に染まった金属バットを持った弟と、「キャッキャ」と楽しそうな声をあげて笑うアイルがいた。

なーんてね。